2011年3月7日 著者・編集者による「自著紹介」 第19回 1/2
『出版大崩壊』(山田順/文春新書) 〈1〉
出版を含むプリントメディアの崩壊は避けられない。
しかし、それを電子書籍が救うというのは幻想に過ぎない!
私は、昨年34年間勤めた出版社を辞め、電子書籍の世界に飛び込んでみました。昨年は「電子書籍元年」と言われ、5月にはiPadも発売され、電子出版は異常ともいえるブームになっていました。この流れは、じつはいまでも続いています。ところが、日本ではまだ「iBook Store」「Kindle Store」「Google eBooksore」もオープンしていません。日本独自の電子書籍プラットフォームはできていますが、いずれも、先行するアメリカのメガプラットフォームより劣っています。
それなのに、電子出版はどんどん進行しています。なにか、嫌な予感がしないでしょうか?
じつは、この本は 昨年の10月末にほぼ書き終えていました。8月ぐらいから、電子出版について懐疑的になり、それをまとめようと書き始めたのですが、初めから紆余曲折がありました。いったん出してくれそうになった社から断られ、二転三転したからです。ですので、書き終えてからは、多くの友人、知己に原稿を読んでもらいました。「やっぱり、こういう結論になるよね」「ここまで書くと出してくれるところなんてないかも」と、業界をよく知っている友人は口を揃えて言いました。
だから、年が明けて最終的に文藝春秋から出していただけると決まったとき、私は正直、ほっとしました。いちばん心配してくれていた、日本写真家協会の理事をしているカメラマンの足立寛氏には真っ先に報告しました。彼は、「はやく出さないと内容が腐ってしまうでしょ」と、まるで自分のことのように思っていてくれたからです。
ところが、ほっとするのもつかの間でした。電子書籍と出版界を取り巻く状況はどんどん変わっていて、それを書き加えるのに追われました。だから、無事に校了できたときは、どっと疲れが出ました。長年編集者をしてきたので、これまで何百冊も校了してきましたが、それはみな他人の本。自分の本となると15年ぶりだったので、終わった後は、本当に放心状態になりました。
しかし、事態はいまも大きく動いています。
本書の後半に登場する全米第2位の書店チェーンのボーダーズは、この校了作業中に連邦破産法11条を申請して、倒産してしまいました。その結果、既存店のうち約200店が閉鎖されるということです。
ボーダーズは私にとってとくに思い入れの強い書店で、行けばいつ店内に併設されたカフェで、コーヒーを飲みながら好きな本を読んだものです。そんな至福の時間は、このデジタル時代には、もはや「時代遅れ」ということなのでしょう。
また、アップルは電子書籍販売の方法をどんどん変えようとしています。「iPad」「iPhone」などで電子書籍販売する場合、これまでは二通りの方法がありました。一つは、アップストア内に「独自ストア」を開きそこで販売する。もう一つは、書籍を単体のアプリとして販売するというもの。このうち、後者の単体アプリを、この2月からアップルは認めなくなりました。
すでに「書籍の単体アプリ申請の差し止めと数量自粛」の要請が、日本の出版社やコンテンツ提供事業者に来ており、担当者は対応に追われています。アップルは、コンテンツの決済方法を自社の決済に一本化する方針を発表し、電子書籍に関しては、最終的に「iBook Store」以外の販売は認めないということです。


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